先日の議会運営委員会において、「政党機関紙の庁舎内勧誘行為の自粛を求める陳情」の扱いについて、議論が行われました。
この陳情は、日本共産党が発行する「しんぶん赤旗」などの政党機関紙の庁舎内での勧誘・配達・集金が行われないように、自粛を求めるとしながら、同時に、職員への状況調査をすることも求めています。
この陳情の何が問題か?
①「陳情」は、庁舎管理規則を持ち出して、庁舎内での政党機関紙の勧誘・配達・集金は禁止行為にあたるとしている。
しかし、そもそも庁舎管理規則は市民一般を対象に定められたものであり、議員の活動まで規制の対象とはしていない。どの政党の機関紙であろうと、政党がその機関紙を広範な国民にすすめることは憲法が保障する正当な政治活動です。政党に所属する議員や党員が、自治体の幹部職員や一般職員に政党機関紙の購読を働きかけ、配達・集金する活動は、憲法で保障された政治活動であり、購読する職員にとっては、個人の思想・信条の自由、内心の自由の問題です。これに制限を設けることは許されません。
また、自治体職員が、さまざまな政党がどのような考えや政策などを持っているのかを把握するために、政党機関紙を購読することはなんら批判されるようなことではありません。
もちろん、議員も庁舎の適正な管理のために管理規則の趣旨をふまえることは当然であり、庁舎内における政党機関紙に関する活動については、すでに個人情報の保護など配慮をもって行われており、規則に抵触するような問題は生じていません。
②配達先は自宅でとの通達を出せと「陳情」はいうが、新聞をどこで購読しようと、個人の自由であり、行政機関がこれに干渉することは許されません。
庁舎内の政治的中立性への疑念を払拭するために、云々といいますが、一般に新聞の報道は業務にかかわって必要になることもあり得ます。その場合、勤務時間中に読むことが業務の一環となります。「行政の中立性」というのは、住民に「公正・中立」の立場で行政にたずさわることであって、個々の職員がどのような思想を持っているかは関係ないことです。現に市町村長は、政党からの推薦を受けているものもいるし、政治活動もできます。しかし、行政にあたっては、公正・中立な行政をおこなっているとみなされています。
③「陳情」は議員による職員に対するパワハラ行為、セクハラ行為を持ち出し、あたかも、政党機関紙の勧誘・購読・集金がハラスメント行為になっているかのような主張をしている。
しかし、そもそも、セクハラ・パワハラとは一切関係ありません。市もハラスメントの防止規定を持って対応しており、職員からの機関紙の勧誘や購読についてハラスメントとして相談された事例は聞いたことがありません。さらに、購読は、職員の個人の判断で自主的におこなわれているものであり、断るのも自由です。わが党とは一切無縁です。あたかも圧力で購読させているかのように事実を歪曲することは、許されません。
また、陳情者が提出した、添付資料には、川崎市がかつて行った調査結果が引用されています。
しかしこの調査そのものが高裁判決の中で、「質問項目の中には思想及び良心の自由の保障との関係で限界に近い領域にあるといわざるを得ないものがある」「(調査を)実施すること自体の当否や…より穏当な方法について…適切な判断がなされたとは認め難いところもある」として、「思想・良心の自由」の侵害と紙一重にある市の政治的責任を指摘しているものであります。
さらに、今回参考資料として陳情者から送られてきた資料の中に、この間、大きな問題となっている、統一教会と国際勝共連合が実体上経営する「世界日報」が添付されていました。↓
陳情者が統一教会との強いつながりを持っていることが示唆されます。
統一協会との関係に疑念がある陳情を議会が取り扱うこと自体が問題ではないでしょうか。
神奈川県内の自治体の状況は…
◆愛川町議会は「特定政党の政治活動を審議するのはなじまない」と卓上配布。
◆箱根町議会は、勝共連合から出された全国弁連を攻撃した「陳情」について、山田和江町議が「議会は統一協会に加担すべきではない」と主張し卓上配布。伊勢原市と同様の政党機関紙の「陳情」も卓上配布。
◆大磯町議会は卓上配布。
◆二宮町議会は卓上配布。
◆「陳情」は、職員に心理的圧力を加えるものだから調査しろといいますが、圧力で購読を迫るなどわが党とはまったく無縁です。購読は職員の個人の判断で自主的に行われているものであり、断るのも自由です。
座間市当局は、過去「心理的な強制があるというご指摘ですが、あくまでも購読は本人の自由意思に基づくものであり、ご指摘の部分については節度をもって行われているものと認識しております」「強制があるというご指摘ですが、私の方にはそういうことが届いているということはありません」(2013年12月座間市総務部長)と答弁。
◆小田原市でも「職員から、特にそういった(強要されたなどの)苦情もございません。私の周りでも自由にやめている人もいますし、とらないという人もいますし、その辺の強要はないというふうに考えております」(2014年11月小田原市総務常任委員会で管財契約課長)と答弁しています。
このように、そもそも統一協会との関係に疑念がある陳情を、議会として取り上げることは、議会の見識が問われるものとなっていると同時に、職員の思想・信条の自由やプライバシー権の侵害にもつながりかねない陳情は取り扱うべきではありませんません。
伊勢原市の議会運営委員会では、特に、公明党の議員「政治的中立性に疑念を持たれる」「職務に支障をきたしている」など、根拠のない理由をもとに、この陳情を何としても取り上げたい様子でした。
9月7日の総務常任委員会の陳情審査(9時半~)には、ぜひ、多くの方に傍聴に来ていただきたいと思います。
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